相続した不動産の名義変更(相続登記)は、2024年4月1日から義務になりました。「いつまでに、何をすれば義務を果たしたことになるのか」は、遺産分割が長引いている場合や、昔の相続を放置している場合ほど重要です。2026年10月時点の制度を、実務の順に整理します。
義務の内容と期限の数え方
法務省のQ&Aによると、相続で不動産を取得した相続人は、次のどちらかの日から3年以内に登記を申請する必要があります。
| 場面 | 起算点 | 申請する登記 |
|---|---|---|
| 相続(遺言による取得を含む)で取得した | 取得したことを知った日 | 相続登記 |
| 遺産分割で取得した | 遺産分割が成立した日 | 分割の結果に基づく登記 |
遺産分割がまとまらない間は、後述の相続人申告登記などで義務を果たしておき、分割が成立したらその日から3年以内に分割内容に沿った登記をする、という二段構えで考えます。
守らないとどうなるか
正当な理由なく期限内に登記をしないと、10万円以下の過料の対象になります。いきなり科されるのではなく、登記官が義務違反を知った場合に登記を促し(催告)、それでも登記がされない場合に裁判所へ通知され、裁判所が決定する流れです。催告を受けた人の説明で登記官が正当な理由を認めれば、通知されません。
正当な理由の例として、法務省は次のような場合を挙げています。
- 相続人が極めて多数で、戸籍の収集や相続人の把握に多くの時間がかかる
- 遺言の有効性や遺産の範囲が争われ、不動産を取得する人が決まらない
- 申請義務者本人に重病など、これに準ずる事情がある
- DV被害者などで、避難が必要な事情がある
- 経済的に困窮し、登記の費用を負担できない
「忙しい」「遠方に住んでいる」といった事情は、ここに挙がっていません。例示以外でも個別の事情で認められる場合はありますが、期待せず、迷ったら、次に述べる相続人申告登記を先に使うのが安全です。
遺産分割がまとまらないとき——相続人申告登記
2024年4月に始まった相続人申告登記は、登記官に「自分が相続人である」と申し出ることで、3年以内の申請義務を履行したものとみなされる仕組みです。
- 相続人が単独で申し出ることができ、ほかの相続人の分を代理で申し出ることもできます
- 義務を果たしたとみなされるのは、申し出をした相続人だけです。全員が義務を果たすには、全員が申し出る必要があります(連名での申出も可)
- 申出には、戸籍謄本などの戸籍証明書が必要です
- 遺産分割が成立した後の登記義務は、この制度では果たせません
注意したいのは、これは名義を変えるものではない点です。法務省も、不動産を売却したり抵当権を設定したりするときには、相続登記が必要だと案内しています。売却を考えているなら、申出で時間を稼ぎつつ、分割の合意を急ぐ必要があります。分割の考え方は不動産の遺産分割の4つの方法——現物分割・代償分割・換価分割・共有、それぞれの税と注意点、共有のまま残すリスクは共有不動産を解消する方法——共有物分割請求、持分の売却、所在不明の共有者がいるときで扱っています。
2024年4月より前の相続は2027年3月31日まで
義務化の前に相続し、まだ登記していない不動産も対象です。2024年4月1日より前に相続を知っていた場合の期限は、2027年3月31日です。2026年10月時点で、残りは約5か月半です。
この期限は、祖父母や親の代の名義のまま残っている土地で問題になりがちです。数次相続(相続登記をしないうちに相続人も亡くなった)になっていると、相続人の数が増え、戸籍の収集に時間がかかります。まず現状を把握し、必要なら相続人申告登記を使って期限内に義務を果たす、という順番が現実的です。
登録免許税の免税措置
相続登記の登録免許税は、本来、土地の価額の0.4%(1,000分の4)です。これに対して、次の2つの免税措置が、2027年3月31日まで設けられています。
- 相続した土地を登記しないまま、その相続人が亡くなった場合:その人を名義人にするための登記
- 不動産の価額が100万円以下の土地:相続による所有権移転登記など(2025年度の改正で全国の土地に拡充)
免税を受けるには、申請書に根拠となる法令の条項を記載する必要があり、記載がないと免税になりません。期限が2027年3月31日である点も、登記を急ぐ理由のひとつです。
何をどこまで持っているかを調べる
被相続人の名義の不動産が、どこにいくつあるかを把握するための制度が2つあります。
- 所有不動産記録証明制度:2026年2月2日に始まりました。特定の人が所有権の登記名義人となっている不動産を、登記官が検索して一覧にし、証明書として交付します。請求できるのは、本人と、その相続人などです。相続人が請求するときは、相続関係を示す戸籍謄本や、次の一覧図の写しなどが必要です。請求書の氏名・住所と登記上の氏名・住所が一致しない不動産は抽出されないため、古い住所や旧姓も確認が必要です。手数料は請求方法で異なるため、法務局のページで確認してください
- 法定相続情報証明制度:戸籍謄本等と法定相続情報一覧図を提出すると、登記官が認証文を付した一覧図の写しを無料で交付します。以後の相続手続で戸籍の束を何度も出さずに済みます。申出先は、被相続人の本籍地、最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地のいずれかを管轄する登記所です
なお、登記の現在の状態は登記事項証明書の読み方——表題部・権利部(甲区・乙区)で何が分かるか、取得の方法の方法で確認できます。
売却・活用を考えている方の進め方
- 名義と相続人を確認する(所有不動産記録証明、登記事項証明書、戸籍)
- 遺言があれば内容を確認する(遺言があるとき・ないときの不動産——相続後の売却手続きはどう変わるか)
- 期限(取得を知った日、または2027年3月31日)をカレンダーに書き出す
- 分割がまとまらないときは、先に相続人申告登記で義務を果たす
- 売却するなら相続登記を済ませる。空き家の3,000万円特別控除を使う場合の期限は相続した実家を売るときの「空き家の3,000万円控除」——要件と、使えないケースで確認する
- 売却も活用も難しい土地は、相続土地国庫帰属制度——相続した土地を国に引き取ってもらう要件と費用の要件を確認する
実家の整理全体の考え方は、相続した実家を「売る・貸す・持つ」で比べる——判断までの手順にまとめています。
当社では、相続した不動産の売却を検討される方に、司法書士・税理士と連携しながら、登記の段取りと売却時期の整理をお手伝いしています。
制度は改正されることがあり、個別の事情で結論が変わります。登記の申請は法務局または司法書士、税の判断は税理士にご確認ください(2026年10月時点の情報)。

