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親が判断できなくなったとき、親名義の家は売れるのか——成年後見と居住用不動産の処分

親が判断できなくなったとき、親名義の家は売れるのか——成年後見と居住用不動産の処分

認知症などで本人が契約を理解できない場合、家族でも親の家は売れません。成年後見制度の仕組み、家庭裁判所の許可、かかる時間と費用、事前にできる対策を整理します。

「親が施設に入ったので、空いた実家を売って費用に充てたい」。よくあるご相談ですが、親本人が売買契約の内容を理解できない状態だと、子であっても代わりに売ることはできません。不動産の売買は本人の意思表示が必要で、判断能力のない人の契約は無効になるからです。

判断能力の確認

不動産会社と司法書士は、契約・決済の際に売主本人の意思を確認します。本人が「売る」ことと「いくらで」「誰に」を理解して答えられなければ、取引は進みません。医師の診断書や、日常の会話の様子で、事前に判断します。

成年後見制度を使う

本人に判断能力がない場合、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任してもらい、後見人が本人に代わって契約します。

手続きの流れ

  1. 家庭裁判所に後見開始の申立て(申立てできるのは本人・配偶者・4親等内の親族など)
  2. 医師の診断書、財産目録、親族の意見書などを提出
  3. 裁判所が後見人を選任(親族が候補者になれるが、財産が多い・親族間に対立がある場合は、弁護士・司法書士などの専門職が選ばれることが多い)
  4. 申立てから選任まで1〜3か月程度

居住用不動産は裁判所の許可が要る

後見人が選ばれても、本人の居住用不動産(現に住んでいる家、以前住んでいて戻る可能性のある家、施設入所前の自宅も含む)を売る・貸す・担保に入れるには、家庭裁判所の許可が別途必要です(民法859条の3)。

許可の判断では、売却の必要性(施設費用など)、価格の妥当性(査定書)、本人の意向、売却後の住まいが審査されます。「空いているから売る」「相続対策で売る」だけでは許可されないことがあります。

費用と注意点

  • 申立ての実費(収入印紙・郵便切手・診断書・登記)で数万円、専門職後見人の報酬は月2〜6万円程度が目安(裁判所が決める)
  • 後見は、売却が終わったという理由だけでは終了できず、原則として本人が亡くなるか、判断能力が回復して開始の審判が取り消されるまで続く。売却のために利用を始めても、売却が終わったことだけを理由に終了することはできない
  • 後見人は本人の財産を守る立場なので、相続税対策の贈与や、家族の都合での売却はできない

事前にできること(判断能力があるうちに)

任意後見契約

本人が元気なうちに、将来の後見人と権限を公正証書で決めておく制度。判断能力が低下したら、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して契約が始まります。居住用不動産の処分も、契約で権限を定めておけば可能です。

家族信託

自宅や収益物件を信頼できる家族(受託者)に託し、本人(受益者)のために管理・処分してもらう仕組み。判断能力が低下しても、受託者が信託契約の範囲で売却できます。法定後見のような居住用不動産の処分許可を家庭裁判所に求める仕組みではありません。契約の設計に専門家(司法書士・弁護士)が必要で、費用はかかりますが、後見より柔軟です。

生前の売却・住み替え

本人が理解できるうちに、本人の意思で売却や住み替えを決める。最も確実です。

既に判断能力がない場合の現実的な進め方

  1. 医師に判断能力の診断書を依頼し、まず「本人契約が可能か」を確認
  2. 可能性がなければ、成年後見の申立てを司法書士・弁護士に相談(売却の必要性を示す資料を準備)
  3. 並行して、不動産会社に査定を依頼(許可申立てに査定書が必要)
  4. 後見人選任 → 売却許可 → 売却。全体で半年前後を見込む

施設費用の支払いが先に迫る場合は、本人の預貯金の使い方や、家族が立て替えた分の精算方法も含めて、早めに専門家に相談します。

当社では、成年後見や家族信託が関わる売却について、司法書士と連携し、査定書の作成から裁判所の許可、売却までの段取りをまとめてご案内しています。

法務の個別判断は、司法書士・弁護士にご確認ください。

参考
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