住まいの共有名義は、購入時には自然な選択でも、相続・離婚・親の介護といった転機で問題になります。全員の合意が要る、ローンが残っている、誰かが住み続けたい——よくある状況ごとに、進め方を整理します。
共有の基本
- 売却や建て替えなど「処分」には、共有者全員の同意が必要
- 自分の持分だけを売ることはできるが、買い手は限られ、価格も低くなる
- 固定資産税は共有者の連帯納税。代表者に納税通知が届く
- 2023年4月の民法改正で、所在不明の共有者がいる場合に、裁判所の手続きで持分を取得・譲渡できる制度などが整った
ケース1:夫婦共有の自宅を離婚で手放す
売却して分けるのが最も整理しやすい方法です。
- ローン残債と、売却の目安価格を確認する(オーバーローンなら、差額の負担をどうするか)
- 売却代金からローン・諸費用を引いた残りを持分で分ける(財産分与として、持分と異なる割合にすることもある)
- 売却益が出る場合、3,000万円特別控除は共有者それぞれが使える(各自の持分に対して、要件を満たせば)
一方が住み続ける場合は、相手の持分を買い取る形になります。ローンの名義変更は金融機関の承認が必要で、借り換えになることが多く、収入の審査があります。ペアローンのまま放置すると、相手の滞納で自宅が競売になるリスクが残ります。
ケース2:親子共有(親が亡くなった)
親の持分は相続財産になり、相続人全員で分けます。子が住み続けるなら、他の相続人の持分を代償金で取得する、または他の相続人に相続分を譲ってもらうことになります。
- 親の持分の相続登記は2024年4月から義務(3年以内)
- 同居していた子が自宅の敷地を相続する場合、小規模宅地等の特例(330㎡まで80%減額)が使える可能性がある
- 売却する場合、被相続人の居住用財産の特例(空き家の3,000万円控除)は、共有で子が住んでいた家には原則使えない。通常の3,000万円控除は、自分が住んでいた持分について検討
ケース3:兄弟で相続した実家
誰も住まない実家を兄弟で共有している状態は、時間が経つほど解きにくくなります(次の相続で共有者が増える)。
- 売却して代金を分けるのが最も単純
- 一人が取得して他に代償金を払う場合、取得する人の資金が必要
- 合意できないときは、共有物分割の協議・調停・訴訟。訴訟では現物分割、代償分割、競売(換価)のいずれかが選ばれる
合意を取るための実務
- 数字を揃える:売却の目安(仲介・買取)、ローン残債、諸費用、各自の手取りの試算を一枚にする
- 期限を置く:「いつまでに決めるか」を決めないと、固定資産税と管理負担だけが続く
- 第三者を入れる:当事者同士だと感情が先に立ちやすい。不動産会社が数字を示し、必要なら弁護士・税理士が入る
- 書面にする:合意内容(売却方針、代金の分け方、費用負担)を書面で残す
売却時に共有で注意すること
- 契約・決済には共有者全員の署名・押印と本人確認書類が必要(委任状で代理も可)
- 売却代金は持分どおりに分けるのが原則。異なる割合で分けると贈与とみなされることがある
- 共有者の一人が遠方や高齢で動けない場合は、委任状と司法書士の本人確認で対応できる
共有の住まいは、「誰がどうしたいか」を全員分聞いてからでないと方針が決まりません。当社は、各共有者の意向を個別に伺い、数字と選択肢を全員に同じ形で示すところから始めます。
税務・法務の個別判断は、税理士・弁護士にご確認ください。

