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相続税の取得費加算の特例——相続した土地・建物を売るときに、払った相続税を経費にできる期限と計算

相続税の取得費加算の特例——相続した土地・建物を売るときに、払った相続税を経費にできる期限と計算

相続税を納めた人が相続した土地・建物を期限内に売ると、相続税の一部を取得費に加算できます。要件、計算式、空き家の3,000万円控除との使い分け、申告の手順を2026年10月時点で整理します。

相続税を納めた人が、相続した土地や建物を期限内に売ると、納めた相続税の一部を取得費に足せます。売却益が小さくなり、所得税・住民税が軽くなる制度です。内容は2026年10月時点のものです。

取得費加算の特例とは何か

取得費加算の特例とは、払った相続税のうち売った財産に対応する分を、譲渡所得の「取得費」に上乗せできる仕組みです。売却益は「売値 − 取得費 − 譲渡費用」で決まるため、取得費が増えればその分だけ課税される利益が減ります。

相続した財産は、相続税と譲渡所得税の両方がかかり得ます。この特例は、その負担の重なりを和らげるためのものです。土地・建物のほか株式も対象ですが、本稿では不動産に絞ります。

取得費そのものが分からない場合は、購入時の書類がない——取得費が分からないときの売却の税金も確認してください。

使える人の3つの要件

使えるのは、次の3つをすべて満たす人です。国税庁のタックスアンサーが示す要件は次のとおりです。

  • 相続または遺贈で財産を取得した人であること
  • その人に相続税が課税されていること
  • 相続開始の日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ること

2つ目が見落とされやすい点です。基礎控除や小規模宅地等の特例で相続税が0円になった人は、加算する相続税がないため使えません。相続税の仕組みは不動産を持つ家の相続税の基本で整理しています。

売却期限はいつまでか

売却の期限は、相続税の申告期限から数えて3年後です。相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内で、期限が土曜日・日曜日・祝日などにあたるときは、その翌日が期限になります。

つまり、おおまかには相続開始から約3年10か月が目安です。ただし、実際の期限日は相続開始日と申告期限の曜日で変わります。具体的な期限日は、税理士か税務署で確認してください。

空き家の3,000万円特別控除は「相続から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という別の期限を持ちます。両方を比べるときは、期限が違うことを前提に整理してください。

加算額の計算と、仮の数字での例

加算額は、売った財産ごとに計算します。国税庁の説明では、その人の相続税額に、売った財産の相続税評価額を掛け、その人の課税価格の基礎となった取得財産の価額などの合計で割って求めます。加算額が売却益を超えるときは、売却益が上限です。

仮の数字で確認します。実際の金額ではなく、仕組みを見るための例です。

  • 相続税額:1,000万円
  • 取得財産の価額などの合計:2億円
  • 売った土地の相続税評価額:4,000万円

この場合の加算額は、1,000万円 × 4,000万円 ÷ 2億円 = 200万円です。取得費に200万円が足され、その分だけ売却益が減ります。

生前贈与があった人は、分母の扱いが調整されます。2024年1月1日以後の贈与は、相続時精算課税の贈与財産なら贈与額から精算課税の基礎控除額を引いた残額、暦年課税の贈与財産のうち相続開始前3年以内の贈与以外なら合計額から100万円を引いた残額で数えます。該当する場合は、国税庁の計算明細書で確認してください。

空き家の3,000万円控除とどちらを使うか

同じ家屋・敷地について、取得費加算と空き家の3,000万円特別控除を重ねて使うことはできません。国税庁のNo.3306には、空き家特例の要件として「売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと」が挙がっています。

どちらが有利かは、数字で決まります。売却益が3,000万円以内に収まるなら、控除で売却益がほぼ0になる空き家特例が有利になります。反対に、昭和56年5月31日以前の建築や売却代金1億円以下といった要件を外れる家は、取得費加算が残る選択肢です。空き家特例の要件は相続した実家を売るときの「空き家の3,000万円控除」にまとめています。

申告の手順と必要書類

この特例は、確定申告をしなければ使えません。相続した不動産を売った翌年に、税務署へ申告します。

主な書類は次の2つです。

  • 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]

計算明細書を使うと、加算額を計算できます。申告全体の流れは不動産を売った翌年の確定申告を、税率の「5年」の数え方は不動産を売ったときの税率を参照してください。

よくある疑問

Q1. 相続税を払っていなくても使えますか。 使えません。相続税が課税されていることが要件です。

Q2. 3年を1日過ぎたら、まったく使えませんか。 使えません。期限を過ぎると要件を外れます。売却の予定がある方は、申告期限を確認して時期を決めてください。

Q3. 共有で相続した場合はどうなりますか。 共有で相続した場合も、加算額は共有者それぞれが自分の相続税額と自分の取得財産で計算します。共有持分ごとの計算は国税庁のNo.3267に説明がないため、税務署か税理士に確認してください。取得する財産は遺産分割で変わるため、分割の方法は不動産の遺産分割の4つの方法も合わせて確認してください。

Q4. 売却益が出ていない場合はどうなりますか。 加算額は売却益が上限で、売却益がなければ加算の効果は出ません。

当社では、相続した不動産の売却のご相談では、相続税の申告期限と売却時期を最初に確認し、手取りが残る進め方を一緒に整理しています。

税務の個別判断は、税理士または税務署にご確認ください。

参考
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