自宅を買ったときより安く売ると、税金の計算上は「譲渡損失」が出ます。土地・建物の売却損は、原則として給与など他の所得と差し引くことはできませんが、マイホームについては、一定の要件で損益通算と、引ききれない分の翌年以後への繰越控除が認められています。特例は2種類あり、違いは主に住宅ローンをどこに持っているかです。要件は2026年10月時点の国税庁の情報に基づきます。
2つの特例の全体像
| 買換えの特例 | 買換えなしの特例 | |
|---|---|---|
| 国税庁の番号 | No.3370 | No.3390 |
| 想定する場面 | 旧居を売って新居を買う | 住宅ローンが残る旧居を売る(買換えは問わない) |
| ローンの要件 | 新居に償還期間10年以上の住宅ローン | 旧居に償還期間10年以上の住宅ローン残高 |
| 通算できる損失 | 譲渡損失(敷地500㎡超の部分は繰越不可) | ローン残高から売却価額を引いた額が限度 |
| 売却の期限 | 2027年(令和9年)12月31日まで | 2027年(令和9年)12月31日まで |
どちらも、売った年の1月1日時点で所有期間5年超が必要です。5年以下で売った場合は対象外になるため、売却時期を検討する際は所有期間の数え方に注意します。
買い換える場合(No.3370)
旧居を売り、新しい住まいを買う場合の特例です。主な要件は次のとおりです。
- 売った年の1月1日時点で、旧居の所有期間が5年超
- 売った年の前年1月1日から翌年12月31日までに、床面積50㎡以上の新居を取得する
- 新居を取得した年の翌年12月31日までに住む(または住む見込み)
- 新居を取得した年の12月31日時点で、新居に償還期間10年以上の住宅ローンがある
- 繰越控除を受ける各年の12月31日時点でも、新居の住宅ローンがある
- 旧居の敷地が500㎡を超える場合、超える部分に対応する損失は繰越控除の対象外
新居を現金で買う場合や、償還期間10年未満のローンの場合は、この特例は使えません。
買い換えない場合(No.3390)
住宅ローンが残っている自宅を、ローン残高より安く売った場合の特例です。新居を買うかどうかは問いません。
- 売った年の1月1日時点で、家屋と敷地の所有期間がいずれも5年超
- 売買契約日の前日に、償還期間10年以上の住宅ローン残高がある
- 売却価額がそのローン残高を下回っている
損益通算・繰越控除できる損失は、譲渡損失の全額ではなく、ローン残高から売却価額を差し引いた額が限度です。たとえば購入額より大きく値下がりしていても、ローン残高と売却価額の差が小さければ、使える損失もその範囲にとどまります。売却代金でローンを完済できない、いわゆるオーバーローンの状態を想定した制度です(売却の進め方は「住宅ローンが残っている家を売る」)。
共通の注意点
- 住まなくなった家は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります
- 親子・夫婦・生計を一にする親族など、特別の関係がある人への売却は対象外です
- 売った年の前年・前々年に、3,000万円特別控除などの特例を使っていると対象外です
- 繰越控除は、合計所得金額が3,000万円を超える年は使えません(損益通算そのものには所得要件はありません)
- 繰越期間は、売った年の翌年以後3年間です
申告は「毎年」続ける
損失が出たときは、本来は申告不要ですが、この特例を使うには確定申告が必要です。さらに繰越控除を受けるには、損益通算をした年の翌年分から、繰越控除を使う年分まで連続して確定申告書(損失申告用)を出すことが求められます。途中で申告をやめると、その後の繰越控除が受けられなくなるおそれがあります。
給与所得者でも、この期間は毎年申告することになります。源泉徴収された所得税が還付される、翌年の住民税が下がる、という形で効果が出るため、手続きの手間と効果を比べて判断します。
住宅ローン控除との関係
買い換える場合の特例(No.3370)は、国税庁の案内で、新居の住宅ローン控除と併用できるとされています。3,000万円控除や買換え特例を使うと新居のローン控除が使えなくなるのと比べ、大きな違いです。ただし、新居のローン控除にはそれ自体の要件があるため、両方の要件を個別に確認します。
売る前に確かめておくこと
- 旧居の取得費(購入時の契約書・領収書)。損失の額はここから計算します
- 所有期間が売った年の1月1日時点で5年を超えるか
- 住宅ローンの償還期間と、売買契約日前日時点の残高
- 新居を買う場合、ローンの償還期間と床面積
当社では、売却のご相談の際に、損失が出る見込みかどうか、どちらの特例が候補になるかを整理し、税理士と連携して申告まで見通した段取りをお伝えしています。
税務の個別判断は、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

