「ローンが残っているから売れない」と考える方がいますが、住宅ローン返済中の家の売却はごく一般的です。通常の売却では、決済(引渡し)のときに売却代金や自己資金でローンを完済し、抵当権を抹消できるよう準備します。完済が難しい場合は、金融機関の合意を得た任意売却などを個別に相談します。売却代金で返しきれるかどうかで、進め方が変わります。
まず3つの数字を揃える
- ローン残債:金融機関の残高証明、またはネットバンキングで確認(繰上返済時の手数料も確認)
- 売却の目安価格:不動産会社の査定(複数社)。「売り出し価格」ではなく「成約が見込める価格」で見る
- 諸費用:仲介手数料、印紙税、抵当権抹消の登記費用、引っ越し費用、場合によって税金
売却価格 − 諸費用 ≧ 残債 なら「アンダーローン」。代金で完済でき、残りが手元に残ります。 売却価格 − 諸費用 < 残債 なら「オーバーローン」。差額を自己資金などで埋める必要があります。
アンダーローンの場合:通常の売却
- 売買契約を結ぶ
- 決済日を決め、金融機関に一括返済の申し出(1〜2週間前までに。期限は銀行による)
- 決済当日、買主からの代金を受け取り、その場でローンを返済
- 金融機関が抵当権抹消の書類を渡し、司法書士が所有権移転と抵当権抹消を同時に登記
買主の住宅ローンの実行、売主の完済、登記が同日に行われるのが標準の流れで、特別な手続きは要りません。
オーバーローンの場合:3つの選択肢
1. 自己資金で差額を埋める
最も単純です。差額が数十万〜数百万円なら、預貯金で埋めて通常どおり売る方が多いです。
2. 住み替えローン(買い替えローン)
新居を買う場合、残債の差額を新居のローンに上乗せして借りる商品があります。新居の担保価値を超えて借りるため審査は厳しめで、収入・勤務先・新居の評価が見られます。売却と購入の決済を同日にそろえる必要があり、段取りが重要です。
3. 任意売却
返済が滞っている、または滞りそうで差額も用意できない場合、金融機関の同意を得て、残債を下回る価格で売却し、残りを分割返済していく方法です。競売より高く売れることが多く、引っ越し時期なども交渉できます。ただし、金融機関の合意が前提で、信用情報には影響します。返済が苦しくなった段階で早めに金融機関へ相談することが、選択肢を残します。
売却損が出たときの税の特例
住宅ローンが残るマイホームを売って損失が出た場合、一定の要件(売った年の1月1日時点で所有5年超、償還期間10年以上のローンの残債が売却価格を上回るなど)で、損失を給与など他の所得と通算し、翌年以降3年間繰り越せる特例があります。通算できる額は、売買契約日の前日の残債と売却価格の差額が上限です。2027年末までの売却が対象で、確定申告が必要です。オーバーローンで売る方には、税金が戻ってくる可能性がある制度です。
よくある質問
- ローン中でも売り出しは始められる? 始められます。通常の売却では決済時に完済します
- 抵当権は買主に引き継がれる? 引き継がれません。売主が完済して抹消するのが前提で、抹消できない売買に買主の銀行は融資しません
- ペアローン・連帯債務の場合は? 両方の債務を完済する必要があります。離婚で一方だけが売りたい場合も、相手の協力(署名)が必須です
- 団体信用生命保険は? 完済時に消滅します。新居で新たに加入します
ローンが残る家の売却は、「いくらで売れるか」より「決済日にいくら用意するか」の設計が肝心です。当社では、残債・諸費用・売却目安を一枚の表にして、アンダーかオーバーか、どの方法が現実的かを最初に整理してお見せしています。

