住み替えで最初に決めるのは「どの家にするか」ではなく、「売却と購入のどちらを先に進めるか」です。順番が決まると、資金・期限・仮住まいの要否がほぼ決まります。
売り先行:資金が確定してから買う
いまの住まいを先に売却し、手取り額が確定してから次の住まいを探す進め方です。
- 向いている方:住宅ローンの残債が多い、売却代金を頭金に充てたい、二重ローンを避けたい
- 利点:売却価格が確定するので購入予算に迷いがない。時間をかけて売れる
- 留意点:引き渡しまでに次の住まいが決まらないと仮住まいが必要になる。引っ越しが2回になることがある
実務では、売買契約の「引き渡し時期」を長めに設定して探す期間をつくる、または買主と引き渡し猶予を交渉することで、仮住まいを避けられる場合があります。
買い先行:住みたい家を押さえてから売る
次の住まいを先に契約し、その後にいまの住まいを売る進め方です。
- 向いている方:ローン残債が少ない、自己資金に余裕がある、希望条件の物件が少なく出会いを逃したくない
- 利点:仮住まいが不要。住みながら落ち着いて引っ越せる
- 留意点:売却が長引くと、二つの住まいの費用が重なる。購入資金を一時的に立て替える「つなぎ融資」や、残債を次のローンに組み込む「住み替えローン」を使う場合は、金利と審査条件を事前に確認する
買い先行で焦って値下げすると、順番を変えた意味がなくなります。「いつまでに、いくら以上で売れなければ計画を見直す」という線を最初に決めておくと判断しやすくなります。
税の特例は「どれか一つ」
売却益が出る場合、代表的な特例は次の三つで、互いに併用できません。
| 特例 | 概要 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 3,000万円特別控除 | 売却益から3,000万円を控除 | 居住用財産であること など |
| 買換え特例 | 売却益への課税を次の住まいの売却時まで繰り延べ | 居住10年以上・所有10年超、売却代金1億円以下、2027年12月31日までの売却 など |
| 軽減税率の特例 | 所有10年超の場合に税率を軽減 | 3,000万円控除との併用は可、買換え特例とは不可 |
さらに、3,000万円控除や買換え特例を使うと、新しい住まいで住宅ローン控除が使えません(適用関係に期間の制限があります)。売却益の大きさとローン残高によってどちらが有利かが変わるので、契約前に試算しておくことをお勧めします。損失が出る場合は、損益通算・繰越控除と住宅ローン控除の併用が可能とされています。
順番を決めるチェックリスト
- 現在のローン残債と、売却の目安価格の差はどのくらいか
- 自己資金で頭金と諸費用をまかなえるか
- 次の住まいの条件は「探せば見つかる」ものか、「出会いを待つ」ものか
- 仮住まい・2回の引っ越しを許容できるか
- 売却益が出るか。出るなら、どの特例を使うか
この5点が埋まれば、順番はほぼ決まります。迷う場合は、両方の案を「資金の流れ」と「期限」で一つの表にして比べるのが確実です。
税の適用可否は個別の事情で変わります。最終的な判断は税務署または税理士にご確認ください。

