不動産を売ったときの税金は、売却額から取得費と譲渡費用を引いた譲渡所得にかかります。取得費が大きいほど税金は小さくなりますが、古い物件や相続した物件では、購入時の契約書や領収書が見つからないことが少なくありません。
取得費に入るもの
- 土地・建物の購入代金
- 購入時の仲介手数料、登記費用(事業用でない場合)
- 設備費・改良費(増築、リフォームなど資産価値を高めたもの)
通常の修繕費や固定資産税は、取得費に入りません。
建物は、購入価格をそのまま使うのではなく、時間の経過による価値の減り(償却費相当額)を差し引いた額が取得費になります。
居住用の建物の場合、償却費相当額は次の式で計算します。
建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
償却率は、構造ごとに決まっています(木造0.031、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造0.015など。鉄骨造は骨格材の肉厚などによって異なります)。経過年数は6か月以上の端数を1年として数えます。償却費相当額は、取得価額の95%が上限です。
書類がないとき:概算取得費(売却額の5%)
実際の取得費が分からない、または売却額の5%に満たない場合は、売却額の5%相当額を取得費として計算できます。
たとえば3,000万円で売るなら、取得費は150万円とみなされ、譲渡所得は(3,000万円 - 150万円 - 譲渡費用)になります。
ここで注意したいのは、5%はあくまで最低保証だという点です。実際に支払った金額を後から証明できれば、そのほうが有利になることが多くあります。売る前に、次のものを探してみる価値があります。
- 購入時の売買契約書・重要事項説明書・領収書
- 銀行の振込記録、住宅ローンの契約書・返済予定表
- 不動産会社に残っている取引の記録、司法書士の登記関係書類
- 建築時の工事請負契約書(建物)
- 相続した物件なら、被相続人の確定申告書(過去に売却や賃貸をしていた場合)
見つからない場合、同じ時期の近隣の取引などから、取得費を合理的に推計して申告できるか、税務署に相談できることもあります(個別の判断になります)。
相続した物件は「取得費加算」も確認
相続した不動産を売る場合は、納めた相続税のうち一定額を取得費に加算できる特例があります。相続の開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ることが要件です。「相続した実家を売るとき」で詳しく扱っています。
譲渡費用に入るもの・入らないもの
| 入る | 入らない |
|---|---|
| 売却時の仲介手数料 | 修繕費 |
| 測量費、印紙代 | 固定資産税 |
| 貸家の売却で借家人に支払う立退料 | 資産の維持・管理にかかった費用 |
| 土地を売るために建物を取り壊す費用(取壊し損を含む) |
まとめ:売る前にやること
- 購入時の書類を探す(銀行の記録、不動産会社、司法書士)
- 建物の取得価額と構造から、償却費相当額を試算する
- 実際の取得費と、売却額の5%のどちらが大きいかを比べる
- 相続物件なら、取得費加算の期限を確認する
当社では、売却のご相談のとき、手元の書類から「取得費をどこまで説明できるか」を一緒に確認しています。
個別の税額・申告は、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

