引っ越しや結婚で住所・氏名が変わっても、不動産の登記簿はそのままです。この「放置」が、2026年4月1日から法律上の義務の対象になりました。以下は2026年10月時点の情報です。
結論:変更日から2年以内に登記する義務があります
不動産の所有者(登記簿上の所有権の登記名義人)は、住所や氏名が変わった日から2年以内に、変更登記を申請しなければなりません。法人の住所や名称の変更も同じです。根拠は不動産登記法第76条の5です。
施行日の2026年4月1日より前に変わっていて、まだ登記していない場合も対象です。この場合の期限は2028年3月31日です。「昔の引っ越しだから関係ない」とはなりません。
守らないとどうなるか:5万円以下の過料
正当な理由なく申請を怠ると、5万円以下の過料の対象になります。過料は裁判所が決める金銭的な制裁で、刑罰である罰金とは別のものです。
ただし、いきなり科されるわけではありません。流れは次のとおりです。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 登記官が、相当の期間を定めて申請を催告する |
| 2 | 期間内に申請も説明もない場合に限り、裁判所へ通知する |
| 3 | 裁判所が、5万円以下の範囲で過料を決める |
法務省は、「正当な理由」の例として、重い病気で手続きできない場合、DV被害などで避難している場合、経済的に困窮して登記費用を負担できない場合、行政区画の変更で住所の表記が変わった場合などを挙げています。後述する申出をしていて、職権による変更登記がまだされていない場合も例に挙がっています。
一番ラクな方法:スマート変更登記の申出
自分で申請しなくても済む仕組みが、同じ日に始まったスマート変更登記です。個人は「検索用情報の申出」を一度しておくと、法務局が住民基本台帳ネットワークで住所・氏名の変更を確認し、職権で登記してくれます。手続は無料です(書面で回答する場合の郵送費は自己負担です)。
申出の方法は2つあります。
- 所有権の保存・移転の登記を申請するとき(購入、相続など)に、申請書に必要事項を書く。2025年4月21日に受付が始まり、国内に住所のある個人は、この場合の申出が必須です
- すでに所有者になっている国内在住の個人が、「かんたん登記申請」からオンラインで、または書面で単独申出をする
実際の流れは次のとおりです。法務局が少なくとも2年に1回の頻度で変更を照会し、変更が見つかると、本人に意思確認の通知を送ります。通知から1か月以内に回答すると、登記が実行されます。2026年度の対象は、同年3月31日までに申出が完了した個人で、通知は12月中旬から順次届く予定です。2027年度以降の時期は未定です。
注意点が3つあります。海外に住所がある個人や、会社法人等番号のない法人は、この仕組みを使えません。通知に回答しないと登記されず、義務も果たしたことになりません。意思確認に回答したあと、登記が完了するまでの間は、その不動産の登記事項証明書が取得できなくなります。
売却を考えているなら自分で申請する
スマート変更登記は、売却のスケジュールに合わせて動いてくれません。法務省のQ&Aも、売却など急ぐ場合は、申出をしていても前倒しで個別に登記してもらえず、自分で変更登記を申請する必要があると案内しています。
売却の実務では、売主の住所が登記簿と違うと、所有権を買主に移す登記の前に住所の変更登記を求められるのが一般的です。引っ越しを何度かしている場合は、つながりを証明する書類が増え、準備に時間がかかります。抵当権を抹消するときも、住所が違えば先に変更登記を求められるのが一般的です。
売却の流れ全体は不動産売却の流れと期間——査定から引渡しまで、何にどれだけかかるか、ローンが残る場合は住宅ローンが残っている家を売る——残債・抵当権・オーバーローンのときの進め方で整理しています。売り出す前に、登記簿の住所が現住所と合っているかを確認してください。
自分で申請するときの費用と書類
登録免許税は、不動産(土地または建物)1個につき1,000円です。土地1筆と建物1棟なら2個で2,000円になります。収入印紙で納めます。
主な書類は次のとおりです。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 登記申請書 | 申請人が自分で作成する(法務局は作成を代行しない) |
| 住民票の写し | 登記簿上の住所、現住所、移転日が分かるもの。マイナンバーの記載がないもの |
| 戸籍の附票の写し | 引っ越しを重ねて住民票だけでは経緯が追えないとき |
申請先は、その不動産の所在地を管轄する法務局です。物件ごとに管轄が違うため、法務局のホームページの「管轄のご案内」で確認してください。書類の作成や申請の代理は、司法書士か弁護士に依頼できます。
相続した不動産でも同じ義務がある
相続で名義人になった人が、その後に引っ越したときも対象です。相続登記そのものの義務と期限は相続登記の義務化を実務で読む——3年の起算点、相続人申告登記、2027年3月末の期限と免税措置に整理しました。相続登記を申請するときは検索用情報の申出も必要で、これをしておけば、その後の住所変更は法務局が追えます。
現在の登記の状態は、登記事項証明書の読み方——表題部・権利部(甲区・乙区)で何が分かるか、取得の方法の方法で取得して確認できます。
よくある疑問
Q. 引っ越しのたびに登記が必要ですか。 A. 住所が変わるたびに、その変更日から2年以内に登記する義務が生じます。引っ越しを重ねた場合は、住民票や戸籍の附票で住所のつながりを示す必要があります。
Q. スマート変更登記の申出をしていれば、何もしなくてよいですか。 A. 法務局からの意思確認の通知に回答する必要があります。回答しなければ登記されません。申出をしていて職権による登記がまだの間は、「正当な理由」の例とされています。ただし通知に回答しないと登記されません。売却を急ぐなら自分で申請してください。
Q. 結婚で姓が変わりました。氏名も対象ですか。 A. 対象です。氏名の変更も、変更日から2年以内に登記する義務があります。
Q. 過料を払えば、登記しなくてよいのですか。 A. 過料を払っても登記簿の記載は直りません。古いままだと、売却のときに結局、変更登記を求められます。
今日からの確認
まず、登記簿上の所有者の住所・氏名が現在のものと一致しているかを、登記事項証明書で確かめてください。違っていれば、売却の予定があるかどうかで道が分かれます。売却予定がなければスマート変更登記の申出、売却予定があれば自分で(または司法書士を通じて)変更登記の申請です。
当社では、売却のご相談の最初に、登記簿と現状の食い違いを確認し、売り出しまでに片付ける手続を一覧にしてお示ししています。
登記の要否や手続は個別の事情で変わります。管轄の法務局または司法書士にご確認ください。

