土壌汚染は調べなければ有無が分からず、見つかれば対策に費用と時間がかかります。そのため、工場・倉庫・ガソリンスタンド・クリーニング店などの跡地や、広い事業用地の売買では、土壌汚染をどう調べ、どう契約に織り込むかが重要な論点になります。
法律上、調査が必要になるきっかけ
土壌汚染対策法では、次のような場面で土地の所有者等に調査が求められます。
| きっかけ | 概要 |
|---|---|
| 有害物質使用特定施設の廃止(法3条) | 特定施設の使用を廃止した工場等の敷地について、調査・報告が必要。操業を続けている場合などは調査が猶予されることがある |
| 調査猶予中の土地の形質変更(法3条) | 猶予を受けている土地で900㎡以上の形質変更をする場合など |
| 一定規模以上の土地の形質変更(法4条) | 3,000㎡以上(有害物質使用特定施設がある事業場の敷地等は900㎡以上)の掘削・盛土などは事前の届出が必要。汚染のおそれがあれば調査を命じられる |
| 健康被害のおそれ(法5条) | 汚染により健康被害が生じるおそれがあると認められる場合 |
形質変更の届出は、原則として着手の30日前までです(手続きによって期限が異なるものがあります)。
名古屋市の条例による上乗せ
名古屋市では、土壌汚染対策法に加えて環境保全条例でも調査・届出の義務を定めています。たとえば、特定有害物質等を取り扱う事業所の敷地で500㎡以上3,000㎡未満の土地の形質変更をする場合なども、条例上の対象になります。また、法律上義務のない自主的な調査で汚染が判明した場合も、市への報告が求められています。
名古屋市内の事業用地では、法と条例の両方を確認します。
区域指定と台帳の確認
調査の結果、基準を超える汚染が見つかった土地は区域に指定されます。
- 土壌汚染対策法:健康被害のおそれがあり対策が必要な「要措置区域」と、対策は不要だが形質変更時に届出が必要な「形質変更時要届出区域」
- 名古屋市の条例:「措置管理区域」「拡散防止管理区域」「形質変更時届出管理区域」など
名古屋市は、条例に基づく区域の台帳と解除台帳をウェブサイトで公開しています。対象地や周辺の指定状況、過去の指定・解除の経緯をまず確認します。土壌汚染対策法の区域に指定されている土地は、宅地建物取引業法の重要事項説明でも説明の対象になります。
地歴調査から始める
法律上の義務がなくても、売買にあたって任意に調査を行うことがあります。一般的には段階的に進めます。
- 地歴調査:登記簿、古い住宅地図、空中写真、行政の届出記録、聞き取りなどから、過去の使われ方を調べる
- 表層の土壌調査:汚染のおそれがある場所・物質を絞り込み、試料を採取して分析する
- 詳細調査:汚染が見つかった場合に深さ方向の広がりを調べ、対策の範囲と方法を検討する
地歴調査で汚染のおそれが低いと判断できれば、そこで取引を進めることもあり得ます。工場などの履歴がある土地では、買主から追加の調査を求められることがあります。
売買契約での扱い
土壌汚染の扱いは、契約で次の点を具体的に決めておくことが大切です。
- 調査の実施者と費用負担:売主が契約前に行うか、買主が契約後・決済前に行うか
- 調査結果による条件:基準超過が判明した場合に、価格を調整するか、売主が対策してから引き渡すか、契約を解除できるか
- 契約不適合責任:引渡し後に汚染が見つかった場合の責任の範囲と期間。免責とする場合は、その旨と前提となる調査結果を明記する(売主が宅建業者の場合など、免責に制限がある場合があります)
調べないまま現況で売ると、買主が負うリスクが価格に反映されやすくなります。調査結果を開示して条件を明確にするほうが、検討が進みやすいこともあります。
工場・倉庫用地の売却全般は「工場・倉庫・物流用地を売るときに見られる点」で、買う側の確認は「一棟物件を買う前のチェックリスト」でも触れています。
当社では、事業用地の売却にあたり、地歴の整理や調査会社・専門家との連携を含めて、調査の範囲と契約条件の組み立てを一緒に検討しています。
調査・届出の要否は名古屋市環境局など所管の行政機関に、契約条項の個別判断は弁護士にご確認ください。

