収益不動産への投資には、分譲マンションの一室を買う区分投資と、アパートやマンション、ビルを建物ごと買う一棟投資があります。どちらが優れているということではなく、管理にどこまで関わりたいか、資金と融資の状況、将来どう出口を取りたいかによって向き不向きが分かれます。主な違いを項目ごとに整理します。
全体の比較
| 項目 | 区分投資 | 一棟投資 |
|---|---|---|
| 所有するもの | 専有部分と共用部分の持分、敷地の持分 | 建物全体と土地 |
| 管理の決定 | 管理組合(総会の決議) | オーナー自身 |
| 修繕 | 長期修繕計画に沿って修繕積立金で実施 | オーナーが計画・資金・発注 |
| 毎月の固定費 | 管理費・修繕積立金 | 管理委託費、共用部の維持費など |
| 空室の影響 | 1室空けば収入はゼロ | 複数室で分散される |
| 価格の考え方 | 近隣の同じマンションの取引事例の影響が大きい | 収益力と土地・建物の評価 |
| 出口 | 買い手の層が広い(自己居住用の需要も) | 投資家・事業者が中心 |
管理の自由度
区分投資では、建物全体の管理は管理組合が担い、オーナーは区分所有者の一人として総会で議決権を行使します。外壁の色や設備の更新、管理会社の変更などを自分だけで決めることはできません。その代わり、建物管理の実務を自分で担う必要は小さく、手間をかけずに保有しやすいのが利点です。
一棟投資では、管理会社の選定、共用部の設備投資、入居者募集の条件、リフォームの内容まで、オーナーが自分で決められます。賃料を上げるための改修や、用途の工夫など、経営の工夫が収益に直結する一方、判断の責任もすべてオーナーにあります。
修繕の負担
区分マンションでは、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」に沿って、管理組合が長期修繕計画を作り、修繕積立金を積み立てるのが一般的です。購入前に、計画の内容、積立金の残高、値上げの予定、総会の議事録を確認することで、将来の負担をある程度見通せます。詳しくは「中古マンションは「管理」を買う」をご覧ください。
一棟物件にはこの仕組みがなく、オーナーが自分で修繕の計画を立て、資金を用意します。大規模修繕の時期には大きな支出がまとめて発生します。考え方は「一棟物件の大規模修繕」で整理しています。
融資の見られ方
- 区分投資:物件1戸あたりの金額が比較的小さく、借り手の年収や資産などの属性が重視されやすい傾向があります
- 一棟投資:物件の収益力(純収益で返済をまかなえるか)と担保価値が重視され、レントロールや修繕履歴などの資料が審査の材料になります
どちらの場合も、融資期間は建物の構造と築年数の影響を受けます。金融機関・物件・借り手によって条件は異なるため、早い段階で相談することが大切です。
空室リスクと収入の安定
区分投資は1戸単位なので、入居者が退去すると、次の入居者が決まるまで賃料収入がゼロになり、管理費・修繕積立金とローン返済だけが出ていきます。複数の区分を異なるマンション・エリアで持つことで、リスクを分散する考え方もあります。
一棟投資では、複数の部屋があるため、1室の退去が収入全体に与える影響は小さくなります。一方で、建物全体が同じ立地・同じ築年数なので、エリアの需要が落ちたときや建物が古くなったときには、全室に影響が出ます。
税務上の「事業的規模」
所得税では、建物の貸付けが事業として行われているかを判断する目安として、貸与できる独立した室数がおおむね10室以上、または独立家屋がおおむね5棟以上という基準が国税庁から示されています。区分を複数戸持つ場合や、一棟物件と区分を組み合わせて持つ場合の数え方は、税理士に確認しておくと確実です。事業的規模かどうかで、青色申告特別控除の上限や青色事業専従者給与の可否などの取扱いが変わります。
出口のしやすさ
区分マンションは、投資家だけでなく自分で住む人も買い手になりうるため、買い手の層が広く、価格も近隣の取引事例から推測しやすいのが特徴です。入居者がいる状態で売るか、退去後に売るかで、買い手の層と価格の考え方が変わります。
一棟物件は、買い手が投資家や事業者に限られ、融資の付きやすさが売却価格と期間を左右します。その代わり、土地を含めて所有しているため、建物が古くなっても、建替えや土地としての売却など、オーナーの判断で出口を選べます。区分マンションでは、建替えや売却に区分所有者全体の合意形成が必要です。
どちらが向いているか
- 管理の手間をかけず、少額から始めたい → 区分投資から検討しやすい
- 経営の工夫で収益を高めたい、土地を含めて資産を持ちたい → 一棟投資が選択肢になる
- 相続の分け方も考えたい → 区分は1戸ずつ分けやすく、一棟は共有にならない工夫が必要
当社では、区分・一棟の購入のご相談の際に、物件ごとの管理状況や修繕の見込み、融資と出口の見通しを並べて比較し、投資方針の整理をお手伝いしています。
税務・融資の個別判断は、税理士・金融機関にご確認ください。

