収益物件を検討するとき、物件概要書と一緒に渡されるのがレントロールです。部屋ごとの賃料や契約条件を一覧にしたもので、物件の収益力を判断する出発点になります。ただし、レントロールはあくまで売主側が作成した「ある時点の一覧表」です。不動産鑑定評価基準でも、賃貸用不動産の価格に影響する要因として「賃借人の状況及び賃貸借契約の内容」「貸室の稼働状況」が挙げられています。表に並ぶ数字の背景まで確認することが欠かせません。
レントロールの主な項目
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 部屋番号・面積・間取り | 登記や図面と一致しているか |
| 用途 | 住居・店舗・事務所・駐車場の別。用途で賃料水準や空室リスクが違う |
| 賃料・共益費 | 月額。税込か税抜か(事業用は消費税の扱いを確認) |
| 敷金・保証金 | 預り金として買主に引き継ぐ額。償却の有無 |
| 契約開始日・契約期間 | 入居時期、普通借家か定期借家か |
| 契約者の種別 | 個人契約か法人契約(社宅など)か。個人情報に配慮した形で開示を受ける |
| 備考 | 滞納、フリーレント、賃料改定の予定、特約など |
賃料:相場との乖離を見る
レントロールの賃料は「今払われている額」です。同じ物件の中でも、入居時期によって賃料に差があるのが普通です。
- 長く住んでいる入居者の賃料が、現在の相場より高い:退去すると、次は相場の賃料でしか埋まらない可能性がある
- 最近入った部屋の賃料だけが高い:一時的な条件(フリーレントや広告料の上乗せ)と引き換えに高く設定していないか
- 空室の「想定賃料」:満室想定の賃料が、周辺の募集事例や成約事例と比べて高すぎないか
相場の確認には、周辺の同程度の物件の募集賃料を複数見比べるほか、管理会社や仲介会社に成約ベースの水準を聞くのが確実です。賃料は借地借家法上、経済事情の変動や近傍同種の建物の賃料との比較などで不相当になったときに、当事者が将来に向かって増減を請求できる仕組みもあります(第32条)。相場より高い賃料は、将来下がる可能性を織り込んで見ます。
契約日:入居時期の偏りを見る
契約開始日を並べると、物件の状態が見えてきます。
- 売却直前の数か月に契約が集中している:売却に向けて、条件を緩めて空室を埋めた可能性がある。入居審査や条件を確認する
- 長期入居が多い:安定している反面、退去時の原状回復や内装更新の費用が大きくなりやすい
- 定期借家の契約がある:期間満了で終了する契約は、満了時期と再契約の見込みを確認する。定期借家は書面による契約と事前の説明が要件で、要件を満たしていなければ普通借家として扱われるおそれがある(第38条)
滞納:数字に出にくいリスク
レントロールに「滞納なし」と書かれていても、それだけで安心はできません。
- 直近12か月程度の入金履歴(通帳の写しや管理会社の収支報告)で、遅れがちな入居者がいないか
- 家賃保証会社の利用の有無。保証会社が立て替えている場合、レントロール上は滞納に見えない
- 滞納がある場合、その債権を買主に引き継ぐのか、売主が精算するのかを売買契約で決めておく
フリーレント・特約:実質賃料を計算する
フリーレント(入居後一定期間の賃料無料)や、入居時の広告料の上乗せは、表に出る賃料を高く保ったまま入居者を集める手法です。
- フリーレント期間中の部屋は、引渡し後しばらく賃料が入らない
- 「〇か月以内に解約したら違約金」などの短期解約違約金の特約があるか
- フリーレント分を契約期間で割り戻した実質賃料で、収入を見直す
事業用の区画では、賃料の段階的な増額・減額の特約や、原状回復の範囲の特約が付いていることもあります。必ず賃貸借契約書の原本(写し)で確認します。
敷金・保証金と引渡し時の精算
入居者がいるまま買う場合、売買の実務では、退去時に入居者へ返す敷金・保証金を買主が引き継ぐ前提で、その額を引渡し時に精算する形がよく取られます。レントロールの預り額と、売主が実際に預かっている額が一致しているかを確認し、売買代金と相殺するのか、別に精算するのかを売買契約で決めておきます。
- 預り額が部屋ごとに記載されているか(「敷金なし」の部屋が多い場合は、その理由も確認する)
- 償却(返還しない部分)の定めがある契約は、その割合と対象
- 引渡し月の賃料・共益費を、日割りでどちらの収入とするか
レントロールと一緒に求める資料
- 各部屋の賃貸借契約書(更新契約書、覚書を含む)
- 過去1〜2年程度の入金・収支の実績(管理会社の月次報告など)
- 空室の募集条件と、募集期間
- 敷金・保証金の預り状況の明細
- 管理委託契約書、サブリース契約がある場合はその契約書
数字の確認ができたら、経費を差し引いた純収益で価格の妥当性を検証します。考え方は「NOIとキャップレート」をご覧ください。
当社では、収益物件の購入のご相談の際に、レントロールと契約書・入金実績を突き合わせ、賃料の相場との乖離や引き継ぐ契約上の論点を整理しています。
契約内容の法的な判断は、弁護士にご確認ください。

