会社が持っている本社ビル、工場、店舗、倉庫などの事業用不動産を売却し、買主から賃借してそのまま使い続ける取引をセール・アンド・リースバックといいます。拠点を動かさずに不動産の価値を現金に換えられる一方、売った後は「借りる立場」になるため、条件次第では長い目で見た負担が重くなることもあります。
仕組み
- 会社(売主)が、自社で使っている不動産を投資家・事業会社など(買主)に売却する
- 同時に、買主と賃貸借契約を結び、売主はテナントとして使い続ける
- 売主は売却代金を受け取り、以後は賃料を支払う
買主にとっては、売主自身が入居するテナントとなるため、賃料収入が見込める投資物件になります。そのため、買主は売主の事業の安定性と賃貸借契約の条件を重視して価格を判断します。
資金調達としての使い方
- 事業資金・設備投資の原資:借入れを増やさずに、まとまった資金を得る
- 借入金の返済:不動産を担保にした借入れを返済し、財務の見直しを図る
- 事業承継・資産の整理:個人名義・会社名義に分散した不動産や、経営と関係の薄い不動産の持ち方を見直すきっかけにする
一方、借入れと比べると、売却によって所有権を失う点が根本的に異なります。将来の値上がり益や、自由に建替え・売却する選択肢は買主に移ります。
賃貸借条件で見るべき点
セール・アンド・リースバックは、売却価格と賃料が表裏一体です。売却価格を高くすれば、それに見合う賃料を求められるのが通常です。次の条件を、売却価格とあわせて比較します。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 賃料と改定条項 | 賃料水準、改定の時期と方法 |
| 契約の種類と期間 | 普通借家か定期借家か。期間満了後に使い続けられるか |
| 中途解約 | 解約できるか、違約金の有無 |
| 修繕・費用負担 | 建物の修繕、設備更新、固定資産税相当額などを誰が負担するか |
| 買戻し | 買戻しの権利があるか、価格・時期の条件 |
| 転売時の扱い | 買主が第三者に売却した場合も契約が承継されるか |
移転が難しい工場などの拠点では、期間満了後も確実に使い続けられるかが最も重要です。
税務上の注意(一般論)
- 売却益への課税:帳簿価額を上回る価格で売れば、売却益は法人の益金になります。繰越欠損金の有無などで、実際の税負担は変わります
- 金銭の貸借とされる場合:法人税法では、資産を売却してその買主からリースを受ける一連の取引が、資産の種類や売買・賃貸に至る事情などから実質的に金銭の貸借と認められる場合には、売買はなかったものとされ、受け取った代金は借入金として扱われます。資産を担保にした金融取引が目的かどうかが判断の軸とされています
- 消費税:建物の譲渡は課税、土地の譲渡は非課税です。売買代金の土地・建物の内訳の決め方に注意します
- 賃料の損金算入:通常の賃貸借であれば、支払賃料は損金になります
買戻し条件や賃料の決め方によって、税務上の扱いが変わる可能性があるため、契約条件が固まる前に税理士と確認します。
会計上の注意(一般論)
会計上も、取引の実態によっては売却として扱えず、金融取引として処理されることがあります。また、新しいリース会計基準が2027年4月1日以後に開始する事業年度から適用される予定で(2026年10月時点)、適用を受ける会社では、借手の賃借が資産・負債として計上されるなど、財務諸表への影響が変わります。自社が適用対象か、どのように処理されるかは、監査法人や税理士に確認してください。
検討は、売却の目的と拠点として使いたい期間を決め、売却価格と賃料の組み合わせを複数比べ、借入れや移転など他の選択肢とも比べてから、税務・会計の確認を経て条件を詰める順で進めます。
法人で不動産を持つことの考え方は「収益不動産は法人で買うか、個人で買うか」、事業承継との関係は「事業承継と不動産」でも整理しています。
当社では、事業用不動産のセール・アンド・リースバックについて、売却価格と賃貸借条件の組み合わせを整理し、税理士と連携しながら条件の検討をお手伝いしています。
税務・会計上の個別判断は税理士・公認会計士に、契約条項は弁護士にご確認ください。

