相続した実家や、長く使っていない家が建つ土地を売るとき、「解体して更地にしたほうが売れやすいのでは」と考える方は多いと思います。ただ、更地にすれば必ず有利というわけではありません。解体費、固定資産税、建て替えができる土地かどうか、契約上の責任の4点から考えると、判断の順番が見えてきます。
まず確かめる:建て替えられる土地か
最初に確認すべきは、今の建物を壊した後に、新しい建物を建てられるかです。建築基準法では、建物の敷地は原則として道路に2m以上接していなければなりません(43条)。この接道義務を満たさない土地は、原則として建て替えができません。
- 接道を満たさない土地を更地にすると、建物の建たない土地になり、用途が駐車場や資材置き場などに限られやすくなります
- 古家を残しておけば、リフォームして住む、という買主を探せる余地が残ります
- 前面の道路が幅4m未満の場合は、セットバックが必要になることがあります
- 通路状の部分で道路に接する土地は、通路の幅と長さの条件を確認します(旗竿地・接道の短い土地)
建て替えできるかどうか不確かなまま解体するのは、避けたほうが安全です。
固定資産税——住宅用地の特例が外れる
住宅が建っている土地には、固定資産税・都市計画税の課税標準を下げる住宅用地の特例があります。名古屋市の案内では次のとおりです。
| 区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(住宅1戸につき200㎡まで) | 6分の1 | 3分の1 |
| 一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 3分の1 | 3分の2 |
家を取り壊して住宅用地でなくなると、この特例が外れ、翌年度以降の土地の税額が上がることがあります。固定資産税は毎年1月1日時点の状況で課税されるため、年内に解体して翌年に売ると、売れるまでの期間の税負担が増えます。解体の時期は、売却の見通しと合わせて決めます。
なお、管理が不十分な空き家として空家法に基づく勧告を受けると、家が建っていても特例の対象から外れます。古家付きで売る場合も、売れるまでの管理は必要です。
解体費の考え方
解体費は建物の構造・規模、前面道路の幅、アスベストの有無、残置物の量などで大きく変わるため、複数の解体業者から見積もりを取って判断します。税務上は、次のように扱われます。
- 土地を売るために建物を取り壊した費用と、その建物の損失額は、譲渡所得の計算で譲渡費用になります(国税庁No.3255)
- 解体後は、建物の滅失登記が必要です
解体費を売主が先に負担するか、古家付きのまま売って買主が解体するかで、売主の手取りの計算が変わります。古家付きで売る場合、買主は解体費を見込んで価格を考えるため、解体費の見積もりを手元に持っておくと、価格交渉の根拠になります。
契約上の責任の違い
| 古家付きで売る | 更地にして売る | |
|---|---|---|
| 建物の不具合 | 建物について責任を負わない旨を定めることが多い | 建物がないため問題にならない |
| 地中の埋設物 | 解体時に買主が発見することがある | 解体時に売主が把握できる |
| 境界・越境 | 建物・塀の越境が問題になりうる | 現地で確認しやすい |
| 引渡しまでの手間 | 少ない | 解体工事・滅失登記が必要 |
古い基礎、浄化槽、井戸などの埋設物は、更地にしてから見つかることがあります。古家付きで売る場合は、埋設物についてどちらが責任を負うかを契約で決めておきます。
空き家の3,000万円控除との関係
相続した実家を売る場合、要件を満たせば「被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除」を使える可能性があります。この特例では、建物を取り壊して土地を売る場合と、耐震基準を満たす建物付きで売る場合などの要件が細かく定められています。解体を決める前に、特例の要件と期限を確認します(空き家の3,000万円控除)。
判断の順番
- 接道・再建築の可否を確認する(ここで答えが変わる)
- 建物を使いたい買主がいそうか、建物の状態はどうか
- 解体費の見積もりと、解体後の固定資産税の増加
- 空き家特例などの税の要件と期限
- 売却の見込み時期から逆算して、解体するなら時期を決める
解体する場合も、隣地との境界や塀・擁壁の所有関係は、工事の前に確認しておきます。境界標が工事で失われたり、共有の塀を誤って壊したりすると、売却の前に隣地との調整が必要になります。
迷う場合は、まず古家付きで売り出し、買主の希望に応じて売主が解体する(解体を条件とする契約にする)という方法もあります。当社では、接道や法令の確認から解体の見積もり、売り出し方の比較まで一緒に整理しています。
法務・税務の個別判断は、司法書士・弁護士・税理士にご確認ください。

