収益物件を買っても、代金をその年に一度に経費にすることはできません。建物は減価償却によって、耐用年数にわたって少しずつ必要経費(法人なら損金)に配分します。中古物件では、残りの耐用年数の決め方と、購入代金を土地と建物に分ける作業が、毎年の税額に直接影響します。
減価償却の対象になるもの・ならないもの
国税庁の案内では、建物、建物附属設備、機械装置、器具備品などは、時の経過で価値が減っていく「減価償却資産」です。一方、土地は時の経過で価値が減らない資産とされ、減価償却しません。
償却方法については、次の点が定められています。
- 1998年(平成10年)4月1日以後に取得した建物:定額法(または旧定額法)
- 2016年(平成28年)4月1日以後に取得した建物附属設備・構築物:定額法
つまり、いま収益物件を買う場合、建物部分は毎年ほぼ同じ額を償却していくことになります。
法定耐用年数(建物の主なもの)
耐用年数は構造と用途で決まっています。国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」から、建物の主なものを抜き出すと次のとおりです。
| 構造 | 住宅用 | 事務所用 |
|---|---|---|
| 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | 47年 | 50年 |
| れんが造・石造・ブロック造 | 38年 | 41年 |
| 金属造(骨格材の肉厚4mm超) | 34年 | 38年 |
| 金属造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) | 27年 | 30年 |
| 金属造(骨格材の肉厚3mm以下) | 19年 | 22年 |
| 木造・合成樹脂造 | 22年 | 24年 |
| 木骨モルタル造 | 20年 | 22年 |
建物附属設備は別の耐用年数で、たとえば給排水・衛生設備、ガス設備は15年です。鉄骨造は骨格材の肉厚で年数が大きく違うため、図面や確認申請書類で確認します。
中古資産の耐用年数——簡便法
中古の建物は、新築時の法定耐用年数ではなく、取得後に使える残りの年数を見積もって償却できます。残りの年数を見積もるのが難しい場合は、次の簡便法によることができます。
- 法定耐用年数をすべて経過している場合:法定耐用年数 × 20%
- 一部を経過している場合:(法定耐用年数 - 経過年数)+ 経過年数 × 20%
1年未満の端数は切り捨て、計算結果が2年に満たない場合は2年とします。
計算例(住宅用):
| 物件 | 計算 | 耐用年数 |
|---|---|---|
| 木造(22年)・築10年 | (22-10)+10×0.2=14 | 14年 |
| 木造(22年)・築30年 | 22×0.2=4.4 | 4年 |
| RC造(47年)・築20年 | (47-20)+20×0.2=31 | 31年 |
築年数の古い木造ほど耐用年数が短くなり、1年あたりの償却費は大きくなります。その分、早い時期に償却が終わり、その後は経費が減って課税所得が増える点も見込んでおく必要があります。
簡便法の注意点
- 中古資産を事業に使うために支出した資本的支出の額が、その資産の取得価額の50%を超える場合は、簡便法は使えません。さらに、その額が再取得価額(新品で取得する場合の価額)の50%を超える場合は、法定耐用年数によります
- 国税庁の法人税の案内では、耐用年数の算定は事業の用に供した事業年度に行う必要があり、その年度に算定しなかった場合、後の年度で改めて算定することはできないとされています。購入した年の申告で決めておくことが大切です
土地と建物の按分
一括で売買された物件は、代金を土地と建物に分けなければ減価償却ができません。建物の割合が大きいほど償却費は増えますが、根拠のない配分は税務上認められないおそれがあります。実務では、次のような方法が使われます。
- 売買契約書に土地・建物の内訳が書かれている場合:その金額による(ただし、著しく不合理な内訳でないこと)
- 建物の消費税額が分かる場合:売主が課税事業者で建物分の消費税が記載されていれば、そこから建物価格を逆算する
- 内訳がない場合:固定資産税評価額の土地・建物の比率で按分する、不動産鑑定評価による、など合理的な方法で区分する
どの方法が適切かは物件と契約の内容によるため、購入前の段階で、契約書に内訳を記載できるか売主側と調整しておくと、後の申告がスムーズです。なお、内訳の記載は売主の消費税の計算にも関わるため、一方的に建物比率を高くすることはできません。
購入時の付随費用
建物の取得価額には、購入代金のほか、仲介手数料のうち建物に対応する部分など、取得のために要した費用が含まれます。固定資産税の精算金の扱いや登記費用の扱いは、個人か法人かでも処理が分かれることがあるため、初年度の申告は税理士と一緒に整理するのが確実です。
融資の期間との関係
金融機関は、融資期間を検討する際に、法定耐用年数から経過年数を引いた「残存耐用年数」を参考にすることがあります。融資の考え方は「収益不動産の融資の基本」もあわせてご覧ください。税務上の耐用年数と、建物が実際に使える年数は別物であり、購入判断では建物の状態そのものを確認することが欠かせません。
当社では、収益物件の購入のご相談の際に、売買契約書の土地・建物の内訳や耐用年数の考え方を、税理士と連携して事前に整理しています。
個別の税務処理は、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

