「親の家を子が買い取る」「相続した実家の持分を兄弟に売る」「知人から直接買う」。身内や知人との取引は、相手が決まっているぶん話は早いのですが、第三者との売買では起きない問題が出てきます。代表的なものを整理します。
1. 価格:安すぎると「贈与」になる
個人間の売買で、時価より著しく低い価格で譲ると、時価との差額が贈与とみなされ、買った側に贈与税がかかります(相続税法7条、いわゆる「みなし贈与」)。親族間に限った制度ではありません。「著しく低い」かどうかは個別の事情で判断され、「時価の何割以上なら安全」という一律の基準はありません。
対策は、価格の根拠を残すことです。
- 不動産会社の査定書(複数社)や、不動産鑑定士の鑑定評価書
- 近隣の成約事例、公示価格・路線価からの逆算
- 固定資産税評価額や路線価「だけ」で価格を決めるのは、土地では時価より低くなりやすく、リスクが高い
逆に、親が子に高く売れば、親側に多額の譲渡益が出ます。適正な時価を確認したうえで、贈与税・譲渡所得税への影響を個別に試算して価格を決めます。
2. 特例が使えないことがある
マイホームの3,000万円特別控除は、配偶者・直系血族(親子・祖父母孫)・生計を一にする親族・同族会社などへの売却には使えません。親の家を子が買う場合、親側はこの特例を使えないため、譲渡益が大きいと税負担が重くなります。
- 兄弟間の売買は、生計が別で他の特殊な関係(売却後の同居など)がなければ、対象になる可能性がある
- 買う側の住宅ローン控除も、生計を一にする親族からの取得では使えない
売る側・買う側の税額を事前に試算してから、価格と進め方を決めます。
3. 住宅ローンが通りにくい
親族間売買は、金融機関が融資に慎重です。理由は、贈与や債務整理の隠れ蓑に使われる例があることと、担保評価が難しいことです。
- 「親族間売買は扱わない」とする銀行もある。事前に複数の金融機関に相談する
- 通る場合でも、宅建業者が仲介に入り、重要事項説明書と売買契約書を作ることを条件にされることが多い
- 自己資金での購入、または親族からの借入れ(契約書・返済記録を残し、贈与と見られないようにする)も選択肢
4. 契約書と手続きは省略しない
身内でも、口約束や簡単な覚書だけで登記を移すのは避けます。後の相続や離婚、債権者との関係で「本当に売買だったのか」が問われるからです。
- 売買契約書(価格・支払方法・引渡し・契約不適合の扱い)を作り、印紙を貼る
- 代金は銀行振込で記録を残す
- 所有権移転登記は司法書士に依頼(登録免許税・不動産取得税は通常どおりかかる)
- 固定資産税は日割り精算、または負担者を決めて書面に残す
5. 他の相続人への配慮
親子間売買は、他の子からは「安く譲った=生前贈与」と見られることがあります。将来の相続で特別受益として争いになる例があります。価格の根拠を残すことに加え、可能であれば他の兄弟にも経緯を共有しておくと、後の揉め事を減らせます。
仲介を入れる意味
親族間・知人間でも、不動産会社に入ってもらう利点は、価格の根拠(査定)、契約書・重要事項説明の作成、金融機関対応、そして「第三者が間に入った」という事実そのものです。手数料はかかりますが、売買契約書と重説を作る書類作成のみの依頼を受ける会社もあり、通常の仲介より費用を抑えられる場合があります。
当社では、親族間・知人間の売買について、価格の根拠づくりから契約書作成、融資の相談先まで、必要な範囲だけをお手伝いしています。税務については税理士と連携して進めます。
税務・法務の個別判断は、税理士・弁護士・司法書士にご確認ください。

