名古屋の都心部には、1970〜90年代に建てられた中小規模のオフィス・店舗ビルが数多くあります。自社ビルとして使ってきた会社の移転・廃業、相続による売却の相談が増える一方、買主は「住宅の一棟物件」とは違う目で見ています。
住宅と違う評価の軸
| 評価の軸 | 住宅系(マンション・アパート) | 事業系(オフィス・店舗ビル) |
|---|---|---|
| 収益の安定性 | 戸数が多く、1戸の退去の影響は小さい | テナント数が少なく、1社の退去で収入が大きく減る |
| 賃料の決まり方 | 周辺相場で比較的均一 | フロア・階数・用途・契約時期で差が大きい。相場より高い既存契約は更新時に下がる前提で見る |
| 契約の種類 | 普通借家が中心 | 普通借家と定期借家が混在。保証金・敷金の額、原状回復の範囲、中途解約条項が価格に影響 |
| 用途の自由度 | 住宅として使い続ける | 用途地域・接道・消防で、転用(住宅・ホテル・店舗)の可否が変わる |
| 設備 | 比較的単純 | エレベーター、空調、受変電、消防設備の更新時期が価格を左右する |
買主は、テナントの契約内容と設備の更新コストを最初に見ます。
売却前に整えるもの
- テナント契約の一覧:賃料・共益費・保証金・契約期間・更新条件・特約(看板、駐車場、原状回復、中途解約)。口頭の約束は文書化する
- 用途と法令:用途地域、検査済証の有無、消防設備の点検記録、昇降機の定期検査報告、増築・用途変更の履歴(違反があると融資がつきにくい)
- 修繕の履歴と見込み:外壁・屋上防水・空調・エレベーター・受変電設備。直近10年の記録と、次の大規模修繕の見積り
- 耐震:1981年5月以前の建築確認(旧耐震)なら、耐震診断の有無。旧耐震ビルは買主と金融機関が限られる
- 境界・越境:隣接ビルとの境界、看板や庇の越境、共用通路の取り決め
- 自社利用部分の扱い:売却後も自社が入居を続けるなら、賃貸借契約の条件を事前に決めておく(リースバック)
価格の考え方
収益物件として売る場合は、純収益(賃料収入 − 経費)を利回りで割り戻した価格が目安になります。中小ビルは住宅系より利回りが高めに見られる(=価格が低めに出る)傾向があり、空室や旧耐震があるとさらに開きます。
一方、立地が良く建て替えや用途転換の余地があるビルは、土地としての価値で評価されることがあります。この場合、テナントの退去を前提にした価格になるため、立退きの難易度(契約の種類・テナントの数)が論点になります。
自社ビルを売って賃借に切り替える
事業は続けるが不動産は手放したい、というときの選択肢がリースバックです。売却代金を事業資金・承継資金に充てられる一方、賃料負担が続くこと、賃貸借の期間と更新条件が事業の継続を左右することを踏まえて契約を設計します。
進め方
- 上記の資料を揃え、収益評価と土地評価の両方で目安を出す
- 「テナント付きで売る」「空けて土地として売る」「自社が借り続ける前提で売る」の3案を比べる
- 買主の候補(投資家、事業者、デベロッパー)に合わせて、仲介か買取かを決める
都心の中小ビルは、情報が整っているかどうかで価格の幅が特に大きい分野です。当社は、契約・法令・設備の整理から、売却後のテナント対応まで一貫してお引き受けしています。

