ホテル・旅館・民泊施設は、不動産の価値と事業の価値が一体になった資産です。「建物と土地を売る」のか「営業ごと譲る」のかで、手続きも価格も買主も変わります。
取引の形を決める
| 形 | 内容 | 向く場合 |
|---|---|---|
| 不動産のみ売却(営業終了) | 建物・土地を売り、営業は売主が廃止 | 事業を続ける意思がない、建物を転用(住宅・オフィス)する買主がいる |
| 不動産+営業の譲渡 | 建物・土地と、営業権・従業員・予約・備品を一括で譲る | 営業を継続する買主(宿泊事業者・投資家)がいる |
| 不動産売却+リースバック | 不動産を投資家に売り、売主または運営会社が賃借して営業を続ける | 資金化したいが運営は続けたい |
| 運営委託(MC)付きで売却 | 不動産は投資家、運営はオペレーターが受託 | 投資家向けに「収益不動産」として売る |
買主が「不動産投資家」か「宿泊事業者」かで、求める資料と価格の見方がまったく違います。
投資家が見るもの
- 稼働率・ADR(平均客室単価)・RevPARの3年分の推移。季節変動と、コロナ前後の比較
- GOP(営業粗利益)と、不動産に残る賃料・収益(運営委託やリースの場合)
- オペレーターの実績・契約条件(固定賃料か変動か、期間、中途解約)
- 設備の更新サイクル(客室・水回り・空調・厨房・温泉設備)と、直近の投資額
- 出口:転用の可否(住宅・オフィス・高齢者施設)、建て替え時の規模
事業者が見るもの
- 立地と客層(ビジネス・観光・インバウンド)、競合の開業予定
- 旅館業の許可。許可は施設と事業者に紐づき、原則として買主が新たに取得する(相続・合併等の承継手続きが使える場合を除く)。保健所・消防の基準に現状が適合しているか
- 従業員の雇用、予約の引き継ぎ、OTA(予約サイト)のアカウント
- 温泉の権利(温泉利用許可、源泉の所有・引湯契約)
売主が整えておくもの
- 営業数値(稼働率・単価・売上・GOP)の月次3年分
- 旅館業許可証、消防設備点検、建築確認・検査済証、用途(ホテルとしての用途変更が適法か)
- 設備の一覧と更新履歴、残債・リース契約
- 温泉・水利・駐車場・送迎などの付帯契約
- 運営を続ける場合の希望条件(賃料、期間、修繕負担の分担)
価格の考え方
- 不動産として:収益還元(運営委託・賃貸の純収益を利回りで割り戻す)と、土地・建物の積算
- 事業として:EBITDA(営業利益+減価償却)の倍率、または将来キャッシュフローの割引
- 転用として:土地の価値 − 解体・転用費用
三つの見方で幅を出し、買主の種類ごとにどの価格が現実的かを検討します。
民泊・小規模施設の場合
住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出施設は、年間180日の営業上限があり、収益物件としての評価は限定的です。旅館業の簡易宿所許可を取っているか、取れる物件かで価格が変わります。用途地域・消防・近隣との関係を事前に確認します。
宿泊施設は買主が限られ、情報が整っているかどうかで取引の成否が決まります。当社は、運営事業者・投資家の両方の視点で資料を整理し、取引の形を一緒に設計しています。

